山口組が13日、神戸市灘区の総本部に直系組長を集め、新年の基本方針を示す「事始め式」を開く。8月には離脱派が「神戸山口組」を結成。山口組は分裂以降、直系組長らの流出に歯止めがかかっていない。事始め式後の山口組はどう動くのか、警察当局は抗争事件への警戒を強める。
「拓道無道」。捜査関係者によると、山口組の篠田建市(通称・司忍)・6代目組長(73)は分裂後初の事始め式で、新年の組指針としてこの言葉を示すとみられる。事始め式は組長に忠誠と団結を誓う暴力団社会の最重要行事とされ、全ての直系組長が招集される。
大阪府警幹部は「『この難局に勢力を拡大しなければ山口組の将来はない』との意思を込めた言葉ではないか。篠田組長の危機感がにじむ」と解説した。
山口組の中核団体だった「山健組」の井上邦雄組長(67)をトップとする神戸山口組も13日、総本部とみられる兵庫県淡路市で「納会」を開く見通しだ。
警察当局によると、山口組は分裂時に72人いた直系組長が56人まで減り、新たな離脱の動きもある。一方の神戸側は、山口組で処分された元組長らも取り込み、結成時から6人増の19人になった。
山口組古参の直系団体「古川組」(兵庫県尼崎市)は今月9日、神戸側に突然移籍した。古川組の組長(55)は11月20日、山口組執行部の一人で篠田組長の出身母体「弘道会」(名古屋市)を仕切る竹内照明会長(55)の激励を受けたばかりだった。
神戸側は直系組長が納める毎月の上納金を低額にして、山口側からの取り込みを図っている。山口組は分裂前、幹部以外の組長に月85万円を求めたが、この額への不満も分裂の一因とされる。神戸側は10万円に抑えた。
今月1日には、山口組最高幹部で、直系団体「極心連合会」(東大阪市)の姜(きょう)弘文(通称・橋本弘文)会長(68)が他の幹部に離脱表明したことも明らかになった。分裂の責任を追及されたことなどに不満があったとされるが、度重なる慰留を受け撤回した。捜査幹部は「『橋本もか』と衝撃が走った。山口組が内部で大きく揺れている証しだ」と語る。
各地で双方によるトラブルも相次ぐ。名古屋市千種区では10月、弘道会系の組長が神戸側組員らに金属バットなどで襲われた。大阪・ミナミでも今月、山口組系組事務所のドアが壊された。警察当局は双方の組員や資金源の激しい切り崩し工作が背景にあるとみる。